女子サッカー
「八咫烏(やたがらす、やたのからす)」日本神話に神の使いとして登場する3本足のカラス、ですが、日本サッカー協会のシンボルマーク、又は、サッカー日本代表ユニフォームのエンブレム、と言ったほうが馴染みがあるかもしれません。
そしてそのカラスの上に、星が輝く事になりました。女子サッカー日本代表「なでしこ」の胸に輝く金の星、ワールドカップ優勝国だけが付けることの許された金の星です。
ところで、私はサッカーを見るのが好きですが、女子サッカーはほとんど見たことがありません。以前、W杯だったかオリンピックだったか忘れましたが、女子サッカーの国際大会を見たことがあったのですが、その時はあまりの試合内容の、というか女子サッカーの競技レベルの低さに、見るのをやめてしまいました。スピードとパワー、その体格差にモノを言わせて、ゴリゴリ攻めるだけの外国勢に、成す術もなくやられるだけの日本。そこには技術や戦術、チームプレーといった類のモノは一切なく、ただ足が早く、ただ背が高く、ただ体が大きい方が勝つようなサッカーを見ても、なんの面白さも感じませんでした。正直、日本の小学生でももう少しまともなサッカーをする、と思いました。
しかし今回、北京オリンピック以降、日本女子はなかなか面白いことをやろうとしてる、と話しには聞いていたので、見てみることにしました。
起きられなかったイングランド戦を除いて、すべての日本戦を見ましたが、今までの女子サッカーにはなかったスタイル、いわゆる「パスサッカー」を見て、新鮮な驚きとともに、これはひょっとして・・・と思いました。
現在、世界のサッカーの主流(男子サッカー)は、相手陣内でボールを奪い手数をかけずに縦に早く攻める、いわゆる「ショートカウンター」スタイルです。
現代サッカーにおいては、戦術の進歩やサッカー選手のアスリートとしての能力の向上などの理由により、敵味方を含め選手間の距離が非常に短く、言い換えると狭いスペースに多くの選手がいるために、ピッチの中盤から相手ペナルティエリア付近の間はボールを長く保持したり、ドリブルで長い距離ボールを運ぶことが難しく、そのためこのようなスタイルなった、というか、せざるを得なくなりました。パスサッカーの代名詞である、スペイン代表やその主力選手の多くが所属するクラブチーム、FCバルセロナにしても、少ないタッチ数で素早く、という部分は変わりません。
しかし女子の場合、試合をするピッチの広さも人数も同じなので、当然体格・体力的な部分から、男子より多くのスペースが生まれます。小柄な日本人選手のパスはそのスピードも遅く、「これはミス、通らない!」と思っても、大柄な外国人選手の足先をするりと抜けてパスが通るシーンを何度も見ました。自陣深くからゆっくりとパスを繋ぎながら、また中盤の人の多い場所でもパスを交換しながらゲームを組み立てる様を見て、これはひょっとしてひょっとすると、男子サッカーよりもゲーム的に面白くなる可能性を秘めているのではないかと感じました。
現在のように女子においてもパワーテニス全盛の時代になる以前、サーブ、もしくはそのリターンでほとんどの勝負が付いてしまう男子に比べ、ラリーやネット際の攻防が面白かった女子テニスのようになる可能性があると思います。
この日本女子のスタイルを「女子サッカーの未来」と言う、海外のサッカー関係者も多くいますし、負けてしまったとは言え、名実共に世界ナンバーワンのアメリカは既にその方向へ舵を切りつつあるそうです。
男子のスタイルを追うのではなく、女子にしかできないスタイルを築く。男子ではもう見ることのできない、パスワークで相手を崩し点を取るような、「美しい」サッカーが見れるようになることを期待しています。
最後に1つだけ。
女子サッカーはまだまだ発展途上ですが、既に男子を上回っている部分があります。フェアプレーです。決勝戦もそうでしたが、テレビで見た試合で相手も含め悪質なプレー、故意のファールや露骨な時間稼ぎなど、は一切ありませんでした。日本はフェアプレー賞ももらいましたが、すべてのチームが「フェアプレー」をしていました。
ベスト8で日本に敗れたドイツのサポーターが「負けた怒りをぶつけたいけれど、日本があまりにフェアな戦いぶりだったので、ぶつける先がない。」と言っていたのが印象的でした。